卵とピーナッツは早く始めたほうがいい?研究でわかっていること
「アレルギーが心配だから、あとにしよう」。この考え方は、この20年で入れ替わりました。卵もピーナッツも、早めに少しずつ始めたほうがアレルギーを防げると、いくつもの研究が示しています。
ただし順番があります。湿疹があるなら、先に皮膚を治すのが大事です。荒れた皮膚から食べものが入ると、かえってアレルギーになりやすいからです。始めるときは、かかりつけの小児科の先生と一緒に進めてください。
昔は「遅らせたほうがいい」と言われていました
1990年代の終わりから2000年代にかけて、卵やピーナッツは後回しにしたほうがいいと考えられていました。日本でもその流れがあり、2005年の調査では、卵を生後7か月以降に始めた赤ちゃんが9割を超えています。
ところが、この方針では防げませんでした。2008年、米国小児科学会が、離乳食を遅らせてもアレルギーの予防にはならないと報告します。日本のガイドラインにも、2012年の版から「特定の食物の開始を遅らせることは推奨されない」と書かれるようになりました。
いま情報がばらばらに見えるのは、そのためです。古い育児書や、上のお子さんのときに聞いた話と食い違っていても、おかしなことではありません。
卵は6か月から、ごく少しずつ
決め手になったのは、国立成育医療研究センターが日本で行ったPETIT研究です。
生後4〜5か月で湿疹(アトピー性皮膚炎)のある赤ちゃん147人を、2つのグループに分けました。片方は加熱した全卵の粉末を毎日食べ、もう片方は食べません。粉の量は6か月から50mg、9か月から250mgに増やし、1歳まで続けます。
1歳の時点で卵アレルギーだったのは、食べたグループが8.3%、食べなかったグループが37.7%でした。およそ8割減った計算になります。
| 時期 | 加熱全卵の粉 | ゆで卵にすると |
|---|---|---|
| 6か月から | 50 mg | 固ゆで卵白 約0.2g |
| 9か月から | 250 mg | 固ゆで卵白 約1g |
| 1歳での確認 | 7 g | 固ゆで全卵 約半分 |
0.2gと言われても、想像がつきにくいと思います。固ゆでした卵白は1個で30gほど。その150分の1です。耳かきで数杯くらいの、本当にわずかな量から始めています。
卵黄から始めるのは理にかなっています
日本の離乳食は、固ゆで卵黄から始めるのがふつうです。アレルギーの原因になりやすいたんぱく質は、卵黄より卵白に多く含まれます。ゆでてしばらく置いてから外した卵黄なら、3分の1個以下でも卵白0.2g相当より少ない量におさまると報告されています。今までのやり方を変える必要はありません。
大事なのは順番です。まず湿疹を治す
日本小児アレルギー学会は2017年に「鶏卵アレルギー発症予防に関する提言」を出しました。骨子はこうです。
- 湿疹のある赤ちゃんでは、卵を始めるのが遅いほど卵アレルギーになりやすい
- だから生後6か月から、医師の管理のもとで微量の卵を始めることをすすめる
- 始める前に、湿疹を治しておくことが望ましい
- 始めるときと量を増やすときは、医師が見ているところで
- 血液検査が陽性というだけの理由で、卵をやめさせるのはすすめられない
PETIT研究に参加した赤ちゃんも、先に湿疹の治療を受けています。皮膚をきれいな状態に保ったまま卵を食べ続けたことが、この結果につながったと考えられています。
つまり、湿疹があるなら「早く卵を始める」より先に「皮膚を治す」が来ます。ここは自己流で進めず、かかりつけの小児科の先生に相談しながら決めてください。
なぜ皮膚が先なのか。口から入るか、皮膚から入るか
卵のたんぱく質が体に入る道すじは、2つあります。口から入る道と、皮膚から入る道です。同じたんぱく質なのに、結果は正反対になります。
口から入ったものは、体が「これは食べものだ」と覚えます。慣れていく方向です。ところが荒れた皮膚から入ると、体は「これは敵だ」と覚えてしまう。皮膚を通してアレルギーの体質ができることを、経皮感作(けいひかんさ)といいます。
湿疹のある赤ちゃんは、皮膚のバリアが弱くなっています。バリアが弱いと、家のほこりや、家族の手についた食べもののかけらが、皮膚から入り込みやすい。実際、ピーナッツアレルギーを調べた研究では、ピーナッツオイルの入ったスキンケア用品を使っていた赤ちゃんで発症が多いことがわかりました。湿疹が重いほど、また湿疹が出はじめた時期が早いほど、食物アレルギーになりやすいという報告もあります。
湿疹を治すことは、アレルギーを防ぐ治療でもあります
アトピー性皮膚炎がある赤ちゃんでは、そこを出発点にして、アレルギーが順番に増えていくことがあります。乳児期の湿疹から始まり、食物アレルギー、そのあとぜんそくや花粉症へ。この並びをアレルギーマーチと呼びます。
行列の先頭にいるのが、乳児期の湿疹です。だから湿疹を治すことには、かゆみを取る以上の意味があります。塗り薬で治して、つるつるの状態を保つ。それ自体が、食物アレルギーを防ぐ手当てになります。
塗り薬は、こわがらなくて大丈夫です
ステロイドの塗り薬に不安があって、量を減らしたり早めにやめたりする方は多いです。でも、中途半端に塗って湿疹がくすぶり続けるほうが、皮膚から入る量は増えていきます。しっかり治してきれいな状態を保つほうが、結果として使う薬の総量は少なくてすみます。塗る強さと期間は、かかりつけの小児科の先生と決めてください。
湿疹がない赤ちゃんは、急がなくて大丈夫
湿疹のない赤ちゃんについては、早く始めると予防になるというデータが、いまのところありません。家族にアレルギーの人がいる場合も同じで、それだけでハイリスクとは考えません。
あわてて早める必要はありません。厚生労働省の「授乳・離乳の支援ガイド(2019年改定版)」どおりに進めれば十分です。同時に、遅らせる理由もありません。ふつうのペースで、卵も魚も肉も出していってください。
ピーナッツは、効果がはっきり出ました
イギリスで行われたLEAP試験を紹介します。重い湿疹か卵アレルギーのある、生後4〜11か月の赤ちゃん640人が対象です。5歳になるまでピーナッツを食べ続けるグループと、いっさい避けるグループに分けました。量はピーナッツのたんぱく質で1週間に6g、3回以上に分けてとります。
5歳の時点でピーナッツアレルギーだったのは、避けたグループの13.7%に対して、食べたグループは1.9%。もともと皮膚テストが軽く陽性だった子でも、35.3%が10.6%まで下がりました。
その後、全員に1年間ピーナッツをやめてもらった追跡研究もあります。やめてもアレルギーは増えませんでした。一度ついた体の慣れは、1年休んだくらいでは失われないようです。
ピーナッツは、粒のままでは食べさせないでください
ここからは日本での注意点です。消費者庁は、硬い豆やナッツ類を5歳以下の子どもに食べさせないよう呼びかけています。奥歯がそろわず、かみ砕く力も飲み込む力もまだ足りないためです。のどに詰まるだけでなく、小さなかけらが気管に入って肺炎や気管支炎を起こすこともあります。
使うなら、市販のピーナッツパウダーかペーストです。国立成育医療研究センターが2024年に発表した研究では、粉やペーストにして離乳食に混ぜる方法で、誤嚥や窒息は1件も起きませんでした。
日本では、無理に始めるものではありません
ピーナッツアレルギーは、日本では欧米ほど多くありません。LEAP試験は、ピーナッツアレルギーがとても多い国で、リスクの高い赤ちゃんを選んで行われた研究です。同じ効果がそのまま日本にあてはまるかは、まだはっきりしていません。食べさせたければ粉かペーストで。使わないという選択も、じゅうぶんありです。
新しい食材は、1日1品ひとさじから
できれば平日の午前中がおすすめです。何かあったときに病院が開いています。
とはいえ、毎回それに合わせるのは無理があります。メリハリで十分です。卵や乳製品のようにリスクがやや高いものは平日の午前に回し、野菜やいものようにリスクの低いものは休日でも気にせず出す。この使い分けなら続けられます。
初めての食材は加熱してから出すと、より安心です。果物も、大丈夫だとわかってから生のすりおろしに移していく順番がいいと思います。くわしくは食材のよくある疑問にまとめました。
口のまわりが赤くなっただけで、やめないで
いちばんもったいないのは、少し赤くなったのを見て、心配だからと完全にやめてしまうことです。食べない期間が続くほど、体はその食べものに慣れる機会を失っていきます。
やり方としては、量を減らして、症状が出ない量で食べ続けます。半分に、それでも出るならさらに半分に。この「症状が出ない量を探して続ける」が、いまの考え方の中心です。
ただし、どこまで減らすかを自己流で決めないでください。じんましんが体に広がった、何度も吐いた、咳き込んで苦しそう。こういうときは、その日のうちに小児科を受診してください。軽い症状でも、次にどう進めるかはかかりつけの小児科の先生と決めるのが安全です。
この記事を読んで始める前に
食物アレルギーの予防については研究が進んでいる分野で、以前の考え方とは変わってきています。ただし、すでに湿疹が出ているお子さんや、ご家族にアレルギーのある方がいる場合は、自己判断で進めず、必ず小児科医に相談してから始めてください。
また、すでに卵アレルギーが疑われているお子さんに、この記事を読んで卵をすすめることはしないでください。予防の話と、発症したあとの治療の話は別のものです。
出典
- Natsume O, et al. Two-step egg introduction for prevention of egg allergy in high-risk infants with eczema (PETIT): a randomised, double-blind, placebo-controlled trial. Lancet. 2017;389(10066):276-286.(PETIT研究)
- 日本小児アレルギー学会 食物アレルギー委員会「鶏卵アレルギー発症予防に関する提言」2017年
- Du Toit G, et al. Randomized trial of peanut consumption in infants at risk for peanut allergy. N Engl J Med. 2015;372(9):803-813.(LEAP試験)
- Du Toit G, et al. Effect of avoidance on peanut allergy after early peanut consumption. N Engl J Med. 2016;374(15):1435-1443.(LEAP-On研究)
- Lack G, et al. Factors associated with the development of peanut allergy in childhood. N Engl J Med. 2003;348(11):977-985.(皮膚からの感作)
- Greer FR, et al. Effects of early nutritional interventions on the development of atopic disease in infants and children. Pediatrics. 2008;121(1):183-191.(米国小児科学会)
- 厚生労働省「授乳・離乳の支援ガイド(2019年改定版)」
- 消費者庁「硬い豆やナッツ類は5歳以下の子どもには食べさせないで!」(子どもを事故から守る!事故防止のための注意喚起)
- 国立成育医療研究センター プレスリリース「アレルゲン食品であるナッツ類も離乳食初期から窒息・誤嚥なく摂取が可能」2024年6月13日
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