子供の病気と家族
子供が胃腸炎で吐いた時、水分と離乳食はどうする?
子供が吐いたり下痢をしたりしている時は、水分を少しずつ何回にも分けて飲ませましょう。母乳やミルク、もしくは水で半分に薄めたリンゴジュースなどを飲ませてください。少しずつでも水分が飲めない時は、医療機関を受診してください。離乳食も、水分が飲めていれば、早めに再開しましょう。→水分の飲ませ方と離乳食
ノロウイルスやロタウイルスには、アルコールの消毒液が効きにくいです。子供が吐いたものや便は、使い捨ての手袋をして片付け、床は薄めた塩素系の漂白剤で拭きましょう。
家族に移りやすいのは、いつまで?
子供の胃腸炎の原因は、ほとんどウイルスが原因です。ノロウイルスは秋から冬に、ロタウイルスは冬から春に多く、アデノウイルスは1年を通して見られます。ロタウイルスとアデノウイルスの胃腸炎は乳幼児に多く、ノロウイルスの胃腸炎は乳幼児から高齢者まで、幅広い年齢の人がかかります。
ウイルスが移ってから症状が出るまでは、ノロウイルスでは12〜48時間、ロタウイルスでは1〜3日です。子供が吐き始めてから数日のうちに家族が吐いたり下痢をしたりしたら、胃腸炎が移ったのかもしれません。→大人がかかった時に気を付けること
子供が胃腸炎のウイルスを特に多く出しているのは、吐いたり下痢をしたりしている間です。症状が治まってからも1週間ほどは移りやすく、便に3週間以上出ることもあります。
ノロウイルスは、吐いたものや便1gに100万〜10億個も含まれているとされ、100個以下のわずかな量でも移ります。ロタウイルスも、10〜100個ほどの少ない量で移るウイルスです。ノロウイルスにかかっても、症状が出ないままウイルスを出している人もいます。
家族に移さないためには?
ノロウイルスやロタウイルスは、吐いたものや便についたウイルスが、手や食べものを通して口から移ります。家では、次のことをしましょう。
- おむつを替えた後、トイレの後、食事の前、料理の前は、石けんを使って、流水で30秒以上手を洗いましょう。ノロウイルスやロタウイルスには、アルコールの消毒液が効きにくいです
- タオルは、家族で分けて使いましょう。ペーパータオルを使う方法もあります
- おむつの便を片付ける時は、使い捨ての手袋をしてください。おむつはすぐに閉じて、ビニール袋に入れて口をしばって捨てましょう
- 哺乳びんや食器は、よく洗った後に、85℃以上の熱湯で1分以上加熱しましょう
子供が吐いたものは、どう片付ける?
子供が吐いたら、ほかの子供を別の部屋に移し、窓を開けて換気をしてから、次の順番で片付けましょう。
- 使い捨ての手袋とマスクをつけましょう。使い捨てのエプロンがあれば、エプロンもつけてください
- 吐いたものは、ペーパータオルや使い捨ての布で、外側から内側に向かって静かに拭き取りましょう。吐いたものは広く飛び散るので、吐いた所から半径2mほどの範囲を拭いてください
- 拭き取ったペーパータオルは、ビニール袋に入れて口をしばってください
- 吐いたものがあった床は、「塩素系」と書いてある漂白剤(花王のハイターなど)を水で薄めた液で拭きましょう。漂白剤の濃度が約6%なら、水1Lに漂白剤を約20mL入れます。500mLのペットボトルの水なら、漂白剤はペットボトルのキャップ2杯弱です。最後に水拭きをしてください
- 使った手袋とマスクもビニール袋に入れ、袋を二重にして口をしばって捨てましょう
- 片付けた後は、石けんを使って、流水で30秒以上手を洗いましょう。服が汚れた時は着替えてください
吐いたものが乾くと、ウイルスが空気中に舞い上がり、吸い込んで移ることがあります。吐いたものはできるだけ早く片付けて、片付けた後もしばらく換気を続けましょう。
吐いたものや便で汚れた服やシーツは、汚れをふき取ってから洗剤を入れた水の中で静かにもみ洗いしましょう。もみ洗いの時は、しぶきを吸い込まないように気を付けてください。もみ洗いした後は、85℃以上のお湯で1分以上洗うか、水1Lに漂白剤を約20mL入れた液に浸けてから、洗濯してください。布団のようにすぐに洗えないものは、よく乾かしてから、スチームアイロンや布団乾燥機をかけましょう。
子供が使ったトイレの便座やドアノブ、手すりは、漂白剤を薄めた液で拭きましょう。濃度が約6%の漂白剤なら、水1Lに漂白剤を約4mL入れます。500mLのペットボトルの水なら、漂白剤はキャップ半分弱です。金属はさびやすいので、拭いた後に水拭きしてください。
塩素系の漂白剤を使う時の注意
トイレ用洗剤のような酸性のものと混ぜると、有毒なガスが出ます。スプレーで吹きかけず、布に含ませて拭いてください。金属はさびやすく、色のついた服は色が抜けることがあります。
手には、漂白剤を使わないでください。薄めた液は時間がたつと効き目が落ちるので、使う日に作りましょう。ペットボトルで薄めた液は、子供が間違えて飲まないように、子供が手に取れない所に置いてください。
ロタウイルスには、ワクチンがあります
ロタウイルスには、5歳までにほとんど全ての子供がかかります。ロタウイルスには口から飲むワクチンがあり、2020年10月から定期接種(市区町村が行う予防接種)になりました。ワクチンは生後6週から受けられ、ワクチンの種類によって2回か3回受けます。1回目は、生後2か月から生後14週6日までに受けましょう。
ロタウイルスのワクチンを受けた子供では、重いロタウイルスの胃腸炎による入院や救急外来の受診が、9割ほどかそれ以上減りました。ノロウイルスには、使えるワクチンがありません。
大人がかかったら、何に気を付ける?
ノロウイルスの胃腸炎は、大人もよくかかり、一度かかった人もまたかかることがあります。大人がノロウイルスにかかると、吐き気、吐く、下痢、お腹の痛みが出ます。熱は出ても軽く、1〜3日で治る人が多いです。
大人も、吐いたり下痢をした場合はしっかり水分補給をしましょう。脱水が軽いうちは、薬局などで買える経口補水液が役に立ちます。下痢止めの薬は、病気が治るのを遅らせることがあるので、使わないほうが良いです。
下痢や吐き気がある間は、家族の料理を作るのを、ほかの人に代わってもらいましょう。症状が治まってからも少なくとも2日間は料理を控え、治った後も、料理の前とトイレの後は石けんで手を洗ってください。
食べものを扱う仕事の人は、下痢や吐き気がある間は職場の責任者に伝えて、食べものに直接触れる作業をしないようにしてください。症状が治まった後も、ノロウイルスは便に出ているので、しばらくは食べものに直接触れる作業を控えましょう。ほかの仕事の人も、仕事を休むかどうかは職場の決まりに従ってください。
家族がかかったというだけで、症状の無い子供が検査を受ける必要はありません。
大人は、こういう時は医療機関に相談してください
おしっこが少ない、口や喉が乾いている、立ち上がるとふらつくといった、脱水のサインが強い時は、医療機関に相談してください。
吐いたり下痢をしたりして食べられない時は?
胃腸炎に罹患した子供で一番気を付けたいのは、脱水です。脱水は、吐いたり下痢をしたりして、体の水分と塩分が足りなくなることです。胃腸炎の多くは2〜7日で治りますが、ロタウイルスの胃腸炎では、脱水が重くなって入院することも少なくありません。
子供が吐いたり下痢をしたりし始めたら、家で早めに水分を飲ませましょう。母乳や育児用ミルクを飲んでいる子供は、母乳やミルクを続けてください。母乳やミルクを飲んでいない子供は、脱水のサインが無ければ、水で半分に薄めたリンゴジュースで構いません。カナダの研究では、脱水がほとんど無い軽い胃腸炎の子供が、水で半分に薄めたリンゴジュースを飲むと、経口補水液を飲んだ子供より、点滴を受けた子供が少なくなりました。日本小児救急医学会のガイドラインも、脱水が無いか軽い子供なら、飲みものを経口補水液に限らなくてよいとしています。
薄めたリンゴジュースのほかに、何を飲ませていい?
塩分を含んだ重湯(お粥の上澄み)やお粥、野菜スープ、チキンスープも勧められています。炭酸飲料、薄めていない果物のジュース、甘いお茶、コーヒーは避けましょう。ジュースのように糖分の多い飲みものは、下痢を悪くすることがあります。
おしっこが少ない、唇や舌が乾いているといった脱水のサインがある時は、医療機関を受診してください。→受診の目安
吐いている時は、どうやって飲ませる?
子供が吐いても、水分を少しずつ飲ませるのを続けましょう。最初は、5mLを5分ごとに飲ませます。5mLは、ティースプーン1杯か、ペットボトルのキャップの4分の3ほどの量です。スプーンで飲ませにくい時は、スポイトや、針の無い注射器の形をした道具(シリンジ)を使っても構いません。吐き気が治まってきたら、飲ませる間隔を少しずつ短くしていきましょう。
少しずつでも水分が飲めない時は、点滴が必要なことがあるので、医療機関を受診してください。→受診の目安
母乳やミルクは、続けていい?
母乳は、吐いている時も下痢をしている時も、続けましょう。母乳を続けた赤ちゃんのほうが、重い脱水が少なかったという報告があります。
育児用ミルクは、薄めずに、いつもの濃さで作ってください。ミルクを薄めても、治るまでの経過は良くなりません。
離乳食は、いつから再開していい?
水分が飲めていれば、離乳食やいつもの食事は、早めに再開して構いません。食事を長い時間抜いても、早く治るわけではなく、体重の戻りが遅れることがあります。食事の内容は、年齢に合ったいつもの食事で構いません。
再開する時は、いつもより量を少なめにしてください。お粥や野菜スープ、短く刻んだ煮込みうどんのような消化の良いものを、少しずつゆっくり食べさせましょう。下痢をしている間は、脂っこい料理や、糖分の多いお菓子や飲みものは控えてください。→お粥の作り方
胃腸炎に罹患した子供は、どんな時に受診したほうがいい?
次のような時は、医療機関を受診してください。
- 水分を摂れない、水を飲んでも吐いてしまう、吐き気が止まらない
- おしっこが半日以上出ない、おしっこの量が少なく色が濃い
- 唇や舌が乾いている、泣いても涙が出ない、目が落ちくぼんで見える、皮膚の張りがない
- 元気が無く、ぐったりしている、呼びかけへの反応が悪い、顔色が悪い、手足が冷たい
- 吐く回数が多い
- 緑色や黄色のものを吐いた、血やコーヒーのかすのようなものを吐いた
- 便に血や粘液が混じる、黒っぽい便が出る
- 下痢の量がとても多い
- お腹の痛みを繰り返す、痛みで泣き叫ぶ、体をくの字に曲げるほど痛がる、右下のお腹を痛がる
- けいれんした
- 持病がある子供で、吐いたり下痢をしたりしている
ロタウイルスの胃腸炎では、白っぽい便がよく出ます。白い便に加えて、おしっこが少ない時は受診してください。
生後3か月未満の赤ちゃんは、熱が38℃以上ある時は、すぐに受診してください。生後2か月未満の赤ちゃんが吐いたり下痢をしたりしている時も、早めに受診しましょう。夜間や休日に受診するか迷った時は、子ども医療電話相談(#8000)に電話して相談できます。
家にある下痢止めを、子供に飲ませないでください
下痢止めの薬は、病気が治るのを遅らせることがあり、子供の胃腸炎には使わないことが勧められています。下痢止めの薬の一つのロペラミドは、赤ちゃんに使った時に、腸が動かなくなる病気(イレウス)が起きたことがあります。ロペラミドは、生後6か月未満の赤ちゃんには使えず、2歳未満の子供にも原則として使わない薬です。家にある大人用の下痢止めを、自分の判断で子供に飲ませないでください。
園や学校は、いつから行ける?
保育園は、吐くことや下痢が治まり、普段の食事が食べられるようになったら登園できます。学校は、吐くことや下痢が軽くなり、全身の具合が良ければ登校して構いません。ノロウイルスが流行っている時期は、前の日に吐いた子供は登園を控えるように、保育園から頼まれることがあります。
胃腸炎のウイルスは、登園や登校を始めた後も便に出ているので、おむつを替えた後やトイレの後の手洗いを続けましょう。→病気ごとの、園と学校に行ける目安
出典
- こども家庭庁「保育所における感染症対策ガイドライン(2018年改訂版、2023年5月一部改訂、2023年10月一部修正)」。別添1(18)①ウイルス性胃腸炎(ノロウイルス感染症)と②ウイルス性胃腸炎(ロタウイルス感染症)(潜伏期間、症状、感染経路、ウイルスの量、ワクチン、便にウイルスが出る期間、流行期の登園)、別添3③④(下痢と嘔吐の時の対応、受診の目安、家庭へのアドバイスの例、嘔吐物の処理)、別添4の表9(感染しやすい期間と登園のめやす)、本文の接触感染とタオルの共用、ロタウイルスの定期接種
- こども家庭庁「保育所における感染症対策ガイドライン」別添2の表3(消毒薬の種類と用途。アルコール類が効きにくい病原体)、表4(塩素系消毒薬の薄め方。製品濃度が約6%なら、嘔吐物や排泄物が付着した床・物と衣類は水1Lに約20mL、トイレの便座やドアノブは水1Lに約4mL)、表5(布類の消毒)、表6(手指の衛生管理)、消毒薬の管理と使用上の注意
- 日本学校保健会「学校において予防すべき感染症の解説〈令和5年度改訂〉」(2024年3月)。感染性胃腸炎(流行する季節と年齢、潜伏期間、合併症と脱水、アルコールの効きにくさ、食器の消毒、ロタウイルスワクチン、登校(園)基準)、吐物・下痢便の清掃、Q2(家族がかかった時の検査)
- 厚生労働省「ノロウイルスに関するQ&A」(2021年11月19日最終改定)。Q1、Q3、Q9(症状)、Q11(下痢止め)、Q16(手洗い)、Q17(食器の熱湯消毒)、Q18(食品を扱う人)、Q20(吐いたものと便の処理)、Q21(服やシーツ)、Q23(環境の消毒)
- 日本小児救急医学会「エビデンスに基づいた子どもの腹部救急診療ガイドライン2017」第Ⅰ部 小児急性胃腸炎診療ガイドライン(2017年6月、第1版)。表3 危険信号(Red Flag)、CQ6(経口補水療法を家で早く始める)、CQ8(吐いている時の経口補水液の飲ませ方)、CQ9(経口補水液を嫌がる時の飲みものと、リンゴジュースの試験の説明)、CQ10(母乳)、CQ11(食事の再開)、CQ12(ミルクを薄めない)、CQ13(避ける食事)、CQ15-2(下痢止め)、CQ16(ロタウイルスワクチン)
- Freedman SB, et al. Effect of Dilute Apple Juice and Preferred Fluids vs Electrolyte Maintenance Solution on Treatment Failure Among Children With Mild Gastroenteritis: A Randomized Clinical Trial. JAMA. 2016;315(18):1966-1974
- Guarino A, et al. European Society for Pediatric Gastroenterology, Hepatology, and Nutrition/European Society for Pediatric Infectious Diseases evidence-based guidelines for the management of acute gastroenteritis in children in Europe: update 2014. J Pediatr Gastroenterol Nutr. 2014;59(1):132-152(母乳を続けること、ミルクを含めて食事を変えずに続けること)
- Centers for Disease Control and Prevention(アメリカ疾病予防管理センター). About Norovirus(2024年4月24日)。治るまでの日数、脱水のサイン、経口補水液、重い脱水の時の受診
- Centers for Disease Control and Prevention(アメリカ疾病予防管理センター). Preventing Norovirus(2025年1月13日)。症状が治まってから少なくとも2日間は料理を控えること
- 厚生労働省「子ども医療電話相談事業(#8000)」
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