6か月から鉄が不足します
赤ちゃんは、生まれる時に鉄を体に蓄えてきますが、蓄えた鉄は6か月ごろに尽きます。母乳には鉄がほとんど含まれていないので、6か月から先は、鉄を食べもので足すことになります。
鉄はカロリーと並んで、補完食でいちばん意識してほしい栄養素です。特に母乳中心の子で不足しやすいです。
栄養素の中でも、鉄だけは重要なので一度きちんと計算してください。理由は記事の後半に書きました。
この記事には広告(アフィリエイトリンク)が含まれます。
蓄えてきた鉄が、6か月で尽きる
おなかの中にいるあいだに、赤ちゃんは母親から鉄を受け取って蓄えます。生まれてから半年ほどは、蓄えた鉄で足りています。
体が大きくなるにつれて蓄えた鉄は使われていき、だいたい6か月あたりで足りなくなります。ちょうど補完食を始める時期と重なります。
鉄が足りなくなることも、補完食を「6か月ごろから」とすすめる理由のひとつで、カロリーだけの話ではありません。
6か月を境に、必要な鉄は9倍になります
鉄の推奨量は、月齢で次のように決まっています。
| 月齢 | 1日にとりたい鉄 |
|---|---|
| 0〜5か月 | 0.5 mg |
| 6〜11か月 | 4.5 mg |
| 1〜2歳 | 4.0 mg |
1日に必要な鉄は、0〜5か月の0.5mgから、6〜11か月の4.5mgへと9倍になります。栄養素の基準値で、月齢のまたぎ目にこれだけ差がつくものは、ほかにありません。
0〜5か月の0.5mgが小さいのは、体に蓄えてきた鉄でまかなえているためで、6か月ごろからは、必要な鉄を全部食べものからとることになります。
アメリカとヨーロッパの基準は、同じ月齢で1日11mgです。日本より高いのは、食べた鉄のうち体に吸収される割合を低く見積もっているためです。
このサイトでは、日本の4.5mgを目標にします。4.5mgは最低限の目安と考えてください。鉄を添加した食品を使って4.5mgを超えても、心配はいりません。アメリカの基準が置いている上限は、1日40mgです。
まず、ミルクを飲んでいるかどうかで分かれます
母乳と育児用ミルクでは、鉄の量が20倍以上ちがいます。
| 鉄(100mLあたり) | |
|---|---|
| 母乳 | 約 0.04 mg |
| 育児用ミルク | 約 0.8〜1.0 mg |
亜鉛や銅は、母乳と育児用ミルクでほとんど同じ量が含まれていて、量が大きく違うのは鉄だけです。
育児用ミルクの鉄が多いのは、意図してそうしてあるためです。日本では、育児用ミルクの鉄は100kcalあたり0.45mg以上と決められていて、母乳の0.06mgと比べると7倍以上になります。
ミルクを飲んでいるあいだは、鉄はほぼ足りています
育児用ミルクを1日に飲む量から、ミルクでとれる鉄を計算すると、次のようになります。
| 1日に飲む量 | ミルクからとれる鉄 |
|---|---|
| 200 mL | 1.6〜2.0 mg |
| 400 mL | 3.1〜4.0 mg |
| 600 mL | 4.6〜6.1 mg |
ミルクからとれる鉄は、製品と実際に飲む量で変わります。今飲んでいる量で鉄が足りていても、その先ずっと同じとは限りません。鉄の確認ツールでは、お使いの表示から計算し、飲む量が減った場合も比べられます。
気をつけたいのは、減っていくときです
飲む量が減ると、ミルクからとれる鉄も減ります。一定の量を切るまで待たず、減らすときに、そのときの食事でどれくらい補えるか計算しましょう。鉄を添加した食品や肉・魚など、食事からとる方法を用意しておいてください。
混合なら、ミルクの量だけ見れば大丈夫
母乳とミルクの両方をあげている人は多く、厚生労働省の調査では、生後3か月の時点で母乳だけが54.7%、ミルクだけが10.2%、混合が35.1%(およそ3人に1人)です。
混合の場合、母乳の鉄は実質ゼロで、足し算に入れても変わらないので、鉄について見るのはミルクの量だけで大丈夫です。
| 1日のミルクの量 | 鉄をどう考えるか |
|---|---|
| 400 mL 以上 | 製品の鉄の量と食事を合わせて確認。飲む量が減ったら見直す |
| 200 mL 前後 | 半分はミルクから。残りを食事で足す |
| 100 mL 以下 | 母乳だけの子と同じつもりで、食事の側を組む |
ミルクの量が日によって変わる人も多いと思います。その場合は、ミルクの少ない日に合わせて計算してください。食べものからとる鉄が多めになっても、困ることはありません。
1日ごとに計算する必要もありません。「うちはだいたい1日200mLくらい」がわかっていれば十分です。
母乳が中心の子は、食事でどれくらいの鉄が必要?
完全母乳の場合、母乳からとれる鉄は1日600mL飲んでも0.24mg程度で、実質ゼロと考えてください。4.5mgの鉄は、まるごと食事で用意することになります。
WHOは、9〜11か月では必要な鉄の97%を食事からとる必要があり、母乳でまかなえるのは残りの3%だとしています。ほかの栄養素とくらべても、鉄はとびぬけて食事に頼ることになります。
ミルクが1日100mL以下の人も、母乳が中心の場合にあたります。
母乳には、ビタミンDもほとんど含まれていません。→サプリで足す量
ふつうの食事だけでは、鉄が足りません
一見すると赤身肉をがんばって食べさせればいいように思います。しかしながら、計算してみるとそう単純ではないことがわかります。
牛のもも赤身肉は100gあたり鉄2.8mgで、鉄の多い食材の代表格です。ただ、1歳前の子が1回に食べられるお肉は10〜15gくらい。15g食べたとして、鉄は0.4mgほどにしかなりません。
4.5mgの鉄を赤身肉だけでとろうとすると、大人のステーキほどの160gが要り、1歳前の子には、とても食べられません。
レバーなら鉄はもっと多いのですが、ビタミンAのとりすぎになるので週に1〜2回までです。野菜は吸収率が5%しかない。つまり、どの食材をどう組み合わせても、毎日の食事だけで4.5mgを埋めるのは相当きつい。
ここまでで鉄を食事のみから摂取するのが非常に難しいことがお判りいただけたかなと思います。鉄を添加した粉末のおかゆなどを使うと、食べる量をほとんど増やさずに、4.5mgの近くまでとれます。→鉄の早見表
売り場で探すなら、ライスシリアルと呼ばれる粉末で、たとえば the kindest「ライスシリアル はじめてのおかゆ」は、1食6gで鉄1.1mg、23kcalがとれます。
鉄だけ、一度計算してほしい理由
このサイトでは、カロリーも栄養のバランスも1週間で見れば十分で、あまり細かく数えなくていいと書いてきましたが、鉄だけは別です。
鉄が足りない状態が続いた赤ちゃんは、認知、運動、情緒、神経の発達を調べる検査で、そうでない赤ちゃんより低い成績が出ることが報告されています。
さらに、あとから鉄を補っても差がそのまま残ることがあり、治せば元どおりになるとは限りません。
一方で、同じ研究のまとめには、重い状態や長く続く状態になる前に、早い時期に鉄を補えば防げるし、取り返せるとも書かれています。
だから鉄は、ほかの栄養素と違って、一度計算しておく価値があります。
貧血になっていなくても
離乳期の鉄不足は、貧血の有無にかかわらず、その後の発達に長く影響する可能性が指摘されています。ただし、貧血のない鉄不足がどこまで影響するのかは、まだはっきり分かっていません。研究が進んでいる途中の話です。
確かなのは、貧血まで進んでから気づくのでは遅い、ということです。
鉄は毎食計算しなくてよく、1日にとれる鉄の合計がだいたい4.5mgに近いかどうかがつかめていれば十分です。
1歳までは、牛乳を飲みものにしない
1歳未満の赤ちゃんが牛乳を飲みものとして飲むと、鉄欠乏性貧血につながることが知られているので、飲ませないようにしましょう。→牛乳に切り替える時期
調理に使うぶんには問題ありません。パンがゆに少し使う、料理に混ぜるといった使い方は大丈夫です。飲みものとして与えるかどうかが分かれ目になります。
鉄は、あとから不足を見つけるのが難しい栄養素です
顔色が白い、元気がない、といった様子は、鉄不足のサインとしてよく挙げられます。ただ、顔色や元気に変化が出るのは貧血がかなり進んでからなので、目印にするには少し遅いです。
鉄不足を早めに見つけるのも、次の理由で簡単ではありません。
① 日本の乳幼児健診に、血液検査は基本的に含まれていません(自治体によって違いはあります)。健診を待っていても、鉄不足が見つかる機会はほとんどありません。
② 赤ちゃんの採血は、簡単ではありません。一度に取れる血液の量が限られるので、調べる項目を増やすほど、体への負担が大きくなります。
③ そのため、貧血が出ていない段階で、蓄えた鉄まで調べることは実際にはあまり行われておらず、心配になって受診しても、多くは食事の話をして終わります。
できることは、ふだんの食事のなかにあります
このサイトで鉄だけ「計算してください」と書いているのは、検査で鉄不足を見つけてもらうのが難しいぶん、ふだんの食事で防いでおくのが確実だからです。難しいことはありません。鉄が含まれている食べものを、いつもの食事にひとつ加えておくだけです。
鉄の量は、いつもの食事で一度計算し、飲む量・食事・製品が変わった時に見直せば、毎日すべてを計算する負担を減らせます。鉄の確認ツールで保存しておくと、変わったところだけ直せます。
何をどれくらい食べれば鉄を十分摂取できるのか
卵黄1個で鉄0.8mg、赤身肉15gで0.4mgがとれます。鉄の量を数えるための表と、足りない鉄の補い方をまとめました。
いつもの食事で、鉄がとれているか計算する
飲む量と食べているものを入れると、1日にとれる鉄の量が出ます。
鉄の含有量が記載してある商品を選びましょう
メーカー公式に鉄のmgの記載がある商品を集めました。広告を含みます。
あわてなくて大丈夫です
鉄が数日足りなくても大丈夫です。数か月の単位で、鉄が足りない状態が続いていなければ十分です。
ふだんの食事に赤身肉や鉄を添加した食品が含まれているなら、鉄の不足はかなり防げています。
それでも、受診したほうがいい場合
次のどれかに当てはまるなら、一度かかりつけの小児科で話しておいてください。診察でわかることもありますし、必要と判断されれば検査もします。
- 早く生まれた、または生まれたときの体重が小さかった
- 顔色の白さや元気のなさが続いている
- 補完食がなかなか進まない、食べる量が少ない
- 1歳前に、牛乳を飲みものとしてあげていた
- 数えてみて、鉄が1日2mgより少ない日が続いている
受診する時は、症状だけでなく、数えておいた「何をどれくらい食べているか」を持っていくと話が早くなります。
出典
- 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」
- 厚生労働省「別表1 母乳及び乳児用調製粉乳の成分組成と表示の許可基準」(母乳と育児用ミルクの鉄・亜鉛・銅の比較)
- 厚生労働省「平成27年度 乳幼児栄養調査結果の概要」2016年(授乳期の栄養方法の割合)
- 文部科学省「日本食品標準成分表2020年版」(第8版)増補2023年
- Lozoff B, Georgieff MK. Iron deficiency and brain development. Semin Pediatr Neurol. 2006;13(3):158-165.
- 加藤陽子「小児と思春期の鉄欠乏性貧血」日本内科学会雑誌 2010;99(6):1201-1206
- 厚生労働省「授乳・離乳の支援ガイド」(2019年改定版)
- WHO/PAHO. Guiding principles for complementary feeding of the breastfed child. 2003(9〜11か月では必要な鉄の97%を補完食から)
- WHO. Guideline for complementary feeding of infants and young children 6-23 months of age. Geneva: World Health Organization; 2023.
- Institute of Medicine. Dietary Reference Intakes for Vitamin A, Vitamin K, Arsenic, Boron, Chromium, Copper, Iodine, Iron, Manganese, Molybdenum, Nickel, Silicon, Vanadium, and Zinc. National Academies Press; 2001(7〜12か月の鉄の推奨量 1日11mg。吸収率を10%として計算。0〜12か月の上限 1日40mg)
- EFSA Panel on Dietetic Products, Nutrition and Allergies. Scientific Opinion on Dietary Reference Values for iron. EFSA Journal. 2015;13(10):4254(7〜11か月の鉄の摂取基準 1日11mg。吸収率を10%として計算)
ヘム鉄・非ヘム鉄の吸収率は文献によって幅があり、ここでは説明のための目安として示しています。
更新履歴
- 2026年9月27日レバーの目安を「2〜3日に1回まで」から「週に1〜2回まで」に変えました。
- 2026年9月19日鉄の推奨量の表に、1〜2歳の4.0mgを足しました。
- 2026年9月19日アメリカとヨーロッパの鉄の基準(1日11mg)を紹介し、4.5mgは最低限の目安だと書き足しました。
- 2026年9月17日鉄を添加した食品を使ったときの説明を、例の数字に合わせて「4.5mgの近くまで届く」に直しました。
このサイトの情報は一般的な医学情報であり、個別の診療の代わりになるものではありません。お子さんの状態については、かかりつけの小児科医にご相談ください。
また、ここに書かれている内容は著者個人の見解であり、所属する機関を代表するものではありません。