補完食のデメリットを、医師が正直に書きます

公開 2026年9月16日

補完食にも、やりにくいところがあります。大きいのは手間と、周りの人と話が合わなくなること。栄養の中身より、暮らしの側に出ます。

このサイトは補完食の考え方ですすめています。それでも、短所を知ったうえで選んだほうが、あとで迷いません。書けるだけ書きます。

まな板の上の切りかけのにんじんと輪切り、そのまわりに中身の入った器と空の器がいくつか、緑の木べらを並べた、支度の途中の調理台のイラスト

献立を自分で考えることになります

月齢の表には、今日出すものが書いてあります。7か月ならこれ、9か月ならこれ。ページをめくれば答えがあります。

補完食は、足りないものを補う食事です。だから何が足りていないかを、まず見ることになります。見るのはカロリーと鉄の2つ。

毎日それを考えるのは、正直しんどい作業です。夜中に何度も起きた翌日に、鉄のmgを数える気力は残っていません。

手を抜ける場所を用意しました。1食ずつ完璧にしなくていいという話を献立の考え方に、市販品で済ませるやり方をベビーフードの記事に書いています。計算はカロリーの計算ツール鉄の計算ツールに任せてください。

周りの人と、話が合わなくなります

お店のベビーフードは、月齢で棚が分かれています。5か月から、7か月から、9か月から。買い物のたびに月齢を突きつけられます。

健診でも、保育園でも、実家でも、話は月齢で進みます。「まだ2回食なの」「もうそんな固いもの食べさせて大丈夫?」。そう言われると、こちらが間違っている気がしてきます。

「補完食」という言葉自体、あまり知られていません。説明しようとすると、長くなります。

ここは、こう考えてください。出すものは離乳食と同じです。ちがうのは、何を見て決めるかだけ。「離乳食を、栄養を見ながら進めている」と言えば、たいてい話は通じます。

月齢の表記そのものにも、幅があります

日本小児科学会は、市販の離乳食やおやつの対象月齢の表記には、明確な根拠も法的な基準もないとしています。同じ9か月でも、食べられるかたさは子どもによって違います。

くわしくはかたさと形の記事に書きました。

決めてもらえないのが、つらいときがあります

このサイトは「月齢ではなく、その子の口の動きで決める」と書いています。裏を返せば、判断をお母さんお父さんに預けているということです。

元気なときは、そのほうが納得できます。疲れているときは、決めること自体が重荷になります。

表のとおりに進めたほうが楽だと感じるなら、そうしてください。厚生労働省の「授乳・離乳の支援ガイド」2019年改定版には、時期ごとの回数とかたさの目安が載っています。書いてある食材や量に、無理なところはありません。

表で進めながら、鉄とカロリーだけ気にする。それでも十分に届きます。

根拠は、思ったほど強くありません

補完食の考え方のもとになっているのは、WHOが2023年に出したガイドラインです。7つの推奨があり、多くは「強い推奨」とされています。

ところが、その根拠になった研究の確実性は、低いか、とても低いと評価されています。強い言い方と、根拠の弱さが一致していません。

2024年、ヨーロッパ・南北アメリカ・アジアなど11の学会が、連名で異議を出しました。「意図しない害につながる可能性がある」という言葉も使っています。

争点は3つでした。2歳まで授乳を続けること、母乳以外の乳をどうするか、そして補完食を始める月齢です。

ほかの部分には賛成しています。いろいろな食品を食べること、甘いものと塩辛いものを避けること、子どものサインに合わせて食べさせること。このサイトが大事にしているところは、争いになっていません。

7つの推奨の中身はWHOガイドラインの解説にまとめました。

6か月ちょうどにこだわると、アレルギーの話が抜けます

WHOが開始を6か月としたとき、見ていたのは栄養面です。アレルギーを防ぐという観点は、検討に入っていません。11学会が指摘したのも、そこでした。

このサイトは、卵とピーナッツについては、アレルギーの学会がすすめるとおり早めに始める立場をとっています。

国立成育医療研究センターは、生後5〜6か月から少量の加熱した全卵を始めるやり方を示しています。離乳食を始める時期と同じです。卵だけをあとに回す理由はありません。

「何か月ちょうどから」という議論に、つき合わなくて大丈夫です。進め方は卵とピーナッツの記事に書いています。

早く始めれば防げる、というほど単純でもありません

早めに始めることには、きちんとした裏づけがあります。2023年のJAMA Pediatricsに載ったまとめでは、卵を生後3〜6か月に始めた子は、卵アレルギーになる割合が4割減っていました。ピーナッツは7割減です。

ただ、人数で見ると印象が変わります。卵アレルギーが100人に4人いる集団で、1000人が早めに始めたとき、減るのは16人ほど。

続けられない家庭が増えることも、同じまとめに書かれています。毎日少しずつ、何か月も。これが思ったより難しい。

オーストラリアでは2016年以降、実際に多くの家庭が早く始めるようになりました。それでもピーナッツアレルギーの割合は、まだ下がっていません。

だから、早く始めたのに発症することはあります。そうなったとき、やり方が悪かったわけでも、お母さんお父さんのせいでもありません。

それでも、やる価値はあります

16人という数字は、小さく見えるかもしれません。ただ、食物アレルギーは何年も続くもので、家族の暮らし方も変わります。避けられるなら、避けたほうがいい。

できる範囲で続けて、続かなかった日は数えない。それくらいの気持ちで構いません。

それでも、この考え方をすすめる理由

授乳をやめなくていい、とはっきり言えます。「離乳」という名前のせいで、母乳やミルクを減らさないといけないと思っている方は多い。そんな必要はありません。

足りなくなるものが分かります。月齢の表には、カロリーが足りているかも、鉄が足りているかも書いていません。ここがいちばん大きな違いです。

食べない日に、落ち込まずに済みます。補うための食事なので、今日足りなければ明日でいい。表のとおりに進まないことを、失敗と感じなくなります。

どちらで進めても構いません。月齢の表を使いながら、鉄とカロリーだけ意識する。それがいちばん続けやすい形かもしれません。

出典

  1. WHO. Guideline for complementary feeding of infants and young children 6-23 months of age. Geneva: World Health Organization; 2023.(7つの推奨と、それぞれの推奨の強さ・根拠の確実性)
  2. ESPGHAN, EAP, ESPR, EAACI ほか. World Health Organization (WHO) guideline on the complementary feeding of infants and young children aged 6-23 months 2023: a multisociety response. J Pediatr Gastroenterol Nutr. 2024;79(1):181-188.(11学会による異議。争点は2年目の授乳・母乳以外の乳・開始月齢の3つ)
  3. Scarpone R, et al. Timing of allergenic food introduction and risk of immunoglobulin E-mediated food allergy: a systematic review and meta-analysis. JAMA Pediatr. 2023;177(5):489-497.(卵は生後3〜6か月の導入で相対危険0.60、ピーナッツは生後3〜10か月で0.31。続けられずに脱落する割合が増えること、オーストラリアの集団では発症率が下がっていないこと)
  4. 国立成育医療研究センター「離乳食における鶏卵摂取の考え方 ~鶏卵アレルギー予防のために~」2023年10月12日更新(生後5〜6か月からの加熱全卵)
  5. 厚生労働省「授乳・離乳の支援ガイド」(2019年改定版)(時期ごとの回数とかたさの目安。現在はこども家庭庁のサイトに掲載)

このサイトの情報は一般的な医学情報であり、個別の診療の代わりになるものではありません。お子さんの状態については、かかりつけの小児科医にご相談ください。

また、ここに書かれている内容は著者個人の見解であり、所属する機関を代表するものではありません。

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