補完食のデメリットを、医師が正直に書きます
補完食にも、やりにくいところがあります。大きいのは、献立を考える手間がかかることと、周りの人と話が合わなくなることです。
このサイトは補完食の考え方を勧めていますが、短所を知ったうえで選んだほうが後で迷わないので、補完食の短所をまとめました。
献立を自分で考えることになります
月齢ごとの離乳食の表(月齢の表)には、7か月ならこの食材、9か月ならこの食材というように、今日出す食べものが書いてあります。
補完食は、母乳やミルクだけでは足りない栄養を補う食事なので、何が足りていないかを保護者が見ることになります。見るのはカロリーと鉄です。
カロリーと鉄を毎日考えるのは、正直しんどい作業です。夜中に何度も起きた翌日に、鉄の量を数える気力は残っていません。
手を抜ける方法も用意しました。計算はカロリーの計算ツールと鉄の計算ツールに任せてください。→1食ずつ完璧にしなくてよい献立の考え方 →市販品で済ませるやり方
周りの人と、話が合わなくなります
お店のベビーフードは「5か月から」「7か月から」「9か月から」と月齢で棚が分かれているので、買い物のたびに月齢を意識させられます。
健診でも、保育園でも、実家でも、話は月齢で進みます。「まだ2回食なの」「もうそんな固いもの食べさせて大丈夫?」と言われると、自分が間違っている気がしてきます。
「補完食」という言葉はあまり知られていないので、説明しようとすると長くなります。
赤ちゃんに出す食べものは、補完食でも離乳食でも同じです。違うのは、何を見て進め方を決めるかだけなので、「離乳食を、栄養を見ながら進めている」と言えば、大抵話は通じます。
月齢の表記そのものにも、幅があります
日本小児科学会は、市販の離乳食やおやつの対象月齢の表記には、明確な根拠も法的な基準もないとしています。同じ9か月でも、食べられる固さは子供によって違います。
決めてもらえないのが、つらい時があります
このサイトは「月齢ではなく、その子の口の動きで決める」と書いています。裏を返せば、判断をお母さんお父さんに預けているということです。
元気な時は自分で決めるほうが納得できますが、疲れている時は、決めること自体が重荷になります。
月齢の表のとおりに進めたほうが楽だと感じるなら、表のとおりに進めてください。厚生労働省の「授乳・離乳の支援ガイド」には、時期ごとの食事の回数と固さの目安が載っていて、書いてある食材や量に無理なところはありません。
月齢の表で進めながら、鉄とカロリーだけを気にすれば十分です。
根拠は、思ったほど強くありません
補完食の考え方のもとになっているのは、WHOが2023年に出したガイドラインです。7つの推奨があり、多くは「強い推奨」とされています。
ところが、推奨の言い方は強いのに、根拠になった研究の確実性は、低いか、とても低いと評価されています。
2024年に、ヨーロッパ・南北アメリカ・アジアなどの11の学会が連名で異議を出し、「意図しない害につながる可能性がある」という言葉も使いました。
11の学会が問題にしたのは、2歳まで授乳を続けること、母乳以外の乳をどうするか、補完食を始める月齢です。
11の学会は、色々な食品を食べること、甘いものと塩辛いものを避けること、子供のサインに合わせて食べさせることには賛成しています。このサイトが大事にしている内容は、争いになっていません。
6か月ちょうどにこだわると、アレルギーの話が抜けます
WHOが補完食の開始を6か月とした時に見ていたのは栄養面で、アレルギーを防ぐという観点は検討に入っていません。11の学会も、アレルギーの観点が抜けていることを指摘しました。
このサイトは、卵とピーナッツについては、アレルギーの学会が勧めるとおり早めに始める立場を取っています。
国立成育医療研究センターは、生後5〜6か月から少量の加熱した全卵を始めるやり方を示しています。生後5〜6か月は離乳食を始める時期と同じなので、卵だけを後に回す理由はありません。
「何か月ちょうどから」という議論には、つき合わなくて大丈夫です。→卵とピーナッツの進め方 →ピーナッツバターを始める時の量
早く始めれば防げる、というほど単純でもありません
早めに始めることには、きちんとした裏づけがあります。2023年のJAMA Pediatricsに載ったまとめでは、卵を生後3〜6か月に始めた子は、卵アレルギーになる割合が4割減っていました。ピーナッツを早めに始めた子は、ピーナッツアレルギーになる割合が7割減っていました。
JAMA Pediatricsのまとめには、湿疹のある赤ちゃんの試験と、湿疹のない赤ちゃんの試験が混ざっています。湿疹のない赤ちゃんだけで同じ効果があるかは、まだはっきりしません。
ただ、人数で見ると印象が変わります。卵アレルギーになる子が1000人に40人いる集団で、1000人全員が卵を早めに始めた時、卵アレルギーになる子は16人ほど減って、24人ほどになります。
続けられない家庭が増えることも、同じまとめに書かれています。毎日少しずつ食べさせることを何か月も続けるのは、思ったより難しいことです。
オーストラリアでは2016年以降、実際に多くの家庭が早く始めるようになりました。それでもピーナッツアレルギーの割合は、まだ下がっていません。
早く始めたのにアレルギーを発症することはあります。発症しても、やり方が悪かったわけでも、お母さんやお父さんのせいでもありません。
卵やピーナッツを早めに始める価値はあります
16人という人数は、小さく見えるかもしれません。ただ、食物アレルギーは何年も続き、家族の暮らし方も変わるので、防げるなら防いだほうがよいと考えます。
できる範囲で続けて、続かなかった日は数えないくらいの気持ちで構いません。
それでも、この考え方を勧める理由
補完食の考え方なら、食事を始めたからといって、母乳やミルクを急いで減らす必要がないと分かります。「離乳」という名前のせいで、食事を始めたら母乳やミルクを減らさないといけないと思っている方は多いのですが、補完食は母乳やミルクに足す食事です。
補完食の考え方なら、足りなくなる栄養が分かります。月齢の表には、カロリーが足りているかも、鉄が足りているかも書いていません。足りない栄養が分かることが、月齢の表との一番大きな違いです。
補完食は栄養を補うための食事なので、今日足りなければ明日補えばよく、月齢の表のとおりに進まないことを失敗と感じなくなります。
月齢の表と補完食の考え方の、どちらで進めても構いません。月齢の表を使いながら、鉄とカロリーだけを意識するのが、一番続けやすい形かもしれません。
このサイトの著者が書いた本
補完食のはじめかた
内科医の父が資料で確かめた、離乳食の進め方
生後6か月から、どの栄養が足りなくなるのか、どう補うのかを、順に書いた本です。各章の終わりに、著者の家で実際にやったことを添えています。
Amazonで見る出典
- WHO. Guideline for complementary feeding of infants and young children 6-23 months of age. Geneva: World Health Organization; 2023.(7つの推奨と、それぞれの推奨の強さ・根拠の確実性)
- ESPGHAN, EAP, ESPR, EAACI ほか. World Health Organization (WHO) guideline on the complementary feeding of infants and young children aged 6-23 months 2023: a multisociety response. J Pediatr Gastroenterol Nutr. 2024;79(1):181-188.(11学会による異議。争点は2年目の授乳・母乳以外の乳・開始月齢の3つ)
- Scarpone R, et al. Timing of allergenic food introduction and risk of immunoglobulin E-mediated food allergy: a systematic review and meta-analysis. JAMA Pediatr. 2023;177(5):489-497.(卵は生後3〜6か月の導入で相対危険0.60、ピーナッツは生後3〜10か月で0.31。続けられずに脱落する割合が増えること、オーストラリアの集団では発症率が下がっていないこと)
- 国立成育医療研究センター「離乳食における鶏卵摂取の考え方 ~鶏卵アレルギー予防のために~」2023年10月12日更新(生後5〜6か月からの加熱全卵)
- 厚生労働省「授乳・離乳の支援ガイド」(2019年改定版)(時期ごとの回数と固さの目安。現在はこども家庭庁のサイトに掲載)
更新履歴
- 2026年10月7日卵アレルギーの人数の説明を1000人あたりにそろえました。授乳の段落を、食事を始めても母乳やミルクを急いで減らす必要はない、という内容に直しました。
- 2026年9月16日JAMA Pediatricsのまとめに、湿疹のある赤ちゃんとない赤ちゃんの試験が混ざっていることを書き足しました。
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